スタインウェイ&サンズだけのスペシャルな構造
2019年11月01日 11時52分
デュープレックススケール
スタインウェイ&サンズのピアノは、その特徴的なクリアな音色が多くのプロフェッショナルアーティストを惹きつけます。あるピアニストは、指の動きがそのまま音色になるとも言います。
スタインウェイ&サンズでは、独自の技術である「デュープレックススケール」というシステムを採用しています。これは既に150年近い歴史を持つシステムです。打弦時に、弦本体と同様に弦の端部分も、振動させることにより共鳴音を得る方法です。このデュープレックススケールは、スタインウェイが持つクリアな音色の秘密です。同様のシステムは他のメーカーのピアノにも採用されていますが、スタインウェイほどクリアに響くものはなかなかありません。
響板
鋼鉄でできた弦を叩くことで音を出すピアノですが、この音を響かせる役割を持つのが木製パーツの「響板」です。木を使うと音を吸収してしまいそうなイメージがあるのですが、それはあながち間違いとも言えません。なぜピアノの響板に木が使われているのかというと、木は低音を響かせ、高音を吸収する効果を持っているからです。仮に響板に金属を使うとしましょう。こうすると高音の響きをコントロールできなくなってしまうでしょう。スタインウェイ&サンズのピアノでは、アラスカスプルースという木材で作られています。スプルースはアコースティックギターのボディーにも使われる木材です。そういうことを考えると、響板に木を使用するというのも納得です。スタインウェイのピアノに使用される響板は、振動膜の原理が考慮されていて、その厚さも細かく設定されています。
スタインウェイ&サンズでは、100年以上付き合いのある会社からスプルースを購入しているそうです。しかし、実際に響板として使用できるものは、全仕入れ量の半分ほどだそうです。
リム
グランドピアノの特徴的な「あの」形をかたどっているのが「リム」です。かえでとマホガニーの合板でできています。スタインウェイ&サンズのピアノでは「リム」も音を響かせるための機構です。他メーカーのピアノの場合、リムはピアノのケースや箱的な役割で考えられています。これは決定的な違いです。スタインウェイでは「リム」と「響板」の間に隙間がありません。リムも振動することで、スタインウェイ独特の音作りに貢献しているのです。アイアンフレーム
スタインウェイ&サンズのピアノは金属製のフレームを持っています。スタインウェイらしく、このフレームも独特の音を奏でるために貢献しています。スタインウェイが送り出すピアノのアイアンフレームは薄く作られているため、打弦により振動します。この金属製フレームの振動は、透明感があり、何か金属的な響きを感じさせますが、この独特の音作りに貢献しているのがフレームというわけです。アクション
鍵盤操作を正確に弦に伝えるアクション。スタインウェイ&サンズでは、ピアニストのタッチを確実に表現させるために、チューブ形式のアクションフレームを採用しています。鍵盤とハンマーが一体化したアクションは、気候による影響を最低限に抑えるよう考えられています。スタインウェイの魅力のひとつ「タッチの軽さ」を生む秘密です。サウンドベル
スタインウェイ&サンズのピアノに特徴的なパーツ。高音側のリムに取り付けられた「サウンドベル」がそれです。トレブルベルと呼ばれることもあります。スタインウェイのすべてのモデルに取り付けられているわけではなく、ABCDの各シリーズのみの装備です。サウンドベルの役割は、音を響かせることです。スタインウェイのピアノは、ピアノ全体で音を響かせるという考え方で作られています。サウンドベルはリムとフレームに固定されていて、フレームやリムを振動させる手助けをしています。
サウンドベルにはもう一つ重要な役割があります。グランドピアノには、柱となる4本の支柱があります。ボディーの内部には多くの弦が張り巡らされていますが、この内部の張力は20トンにもなると言われています。そのため上向きの負荷がかかり、フレームは歪もうとします。これを防ぐために考えられたのがサウンドベルです。
一見、横置きされたベルのような金属部品ですが、強力な負荷がかかる場所に設置されていて、歪もうとするフレームの動きを抑えることができます。サウンドベルは、一番高音側にある支柱と平行に取り付けられていますが、ある意味5本目の支柱としてフレームを支えるはたらきをしているのです。